フィリピン拠点におけるワンヘルスな視点からのウイルス性胃腸炎のサーベイランス・ネットワークの構築と流行株の解析
DATE: PI: グローカル感染症研究センター 教授 河本 聡志
2021年の時点で、世界中でおよそ毎年500万人の5歳未満の子供が亡くなっており、そのほとんどがアジア・アフリカの発展途上国の子供であるといわれています。下痢症感染症はその主要な死亡要因の一つです。ロタウイルス、ノロウイルスをはじめとする下痢症ウイルスによる急性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)は、世界中の社会活動や経済活動にも大きな損害を与え続けています。
フィリピンにおいてもこうした下痢症感染症は公衆衛生学的に大きな問題となっており、5歳未満の死亡率は我が国で2であるのに対してフィリピンでは27となっています(出生1,000あたり、2019年)。
本研究課題では、東北大学がフィリピン拠点で実施しているウイルス性胃腸炎サーベイランス・ネットワークに、大分大学が新たにワンヘルスの視点から動物の検体採取を付け加えることで、フィリピンにおける下痢性ウイルスの挙動、すなわちウイルス性胃腸炎の発生動向、病原体とその遺伝子型の推移、流行株の発生・進化を医学・獣医学の連携でより詳細に調査します。
フィリピン側研究者とも緊密に協力することで、現地で蔓延する下痢症感染症の病因となる下痢症ウイルスについて、新型となる流行株の出現・進化を監視するとともに、発生メカニズムまで解明することで、フィリピンのみならずわが国の下痢症感染症対策に資する情報を提供することを目指します。そのために、フィリピン現地で下痢症発生動向の調査と、便サンプルの収集と解析を実施し、下痢症ウイルス流行株の正確な把握を進めていく予定です。
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