マレーシアにおけるヒトT細胞白血病ウイルス-I型(HTLV-1)疫学調査
ヒトT細胞白血病ウイルス-I型(HTLV-1)は全世界に約2000万人のキャリアが推計されますが、東南アジア地域ではこれまで統計的に信頼に足るHTLV-1感染状況の報告はありません。本プロジェクトはマレーシア(ボルネオ島)における感染状況とHTLV1関連疾患の発症頻度について包括的に調査する初の試みであり、マレーシア大学・サバ校[UMS]・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院[LSHTM]や同地域の医療従事者・保健行政担当者との緊密な共同研究体制を構築しました。
HTLV-1関連疾患はウイルス感染症であり、特に母子感染の予防が重篤な病態を回避する最善の方策です。UMS・LSHTMや現地研究者との研究活動を通じてHTLV-1関連疾患に関する認知度は格段に向上しました。
さらに本プロジェクトは、アフリカ大陸以外で唯一確認されオーストラリア・アボリジニに特有の病態を誘発する類人猿由来HTLV-1C亜種の起源を明らかにする試みも包含しています。ボルネオ島およびマレー半島の先住民やボルネオ島に生息する類人猿の血液検体を用いて分子疫学調査を実施しています。
今後は、1. ボルネオ島マレーシア領全域におけるHTLV-1感染状況の血清学的疫学調査とHTLV-1陽性例より単離したウイルスゲノムの塩基配列解析。2. UMS協力医療機関提供の患者血液検体に対するHTLV-1感染の後方視野的調査。3. UMSと連携したHTLV-1母子感染予防プログラムの教育活動および社会実装。4. マレーシア現地先住民およびボルネオ島生息の類人猿から採集した血液検体を用いたHTLV-1C亜種の起源探索。を実施していきます。
関連リンク
UMS Borneo Medical And Health Research Centre(BMHRC)
https://ums.edu.my/fpsk/en/bmhrc-home
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