第12回グローカル感染症研究セミナーを開催しました。
大分大学グローカル感染症研究センターは、令和5年2月20日(月)に第12回グローカル感染症研究セミナーをハイブリッドで開催しました。第12回は、「ゲノム解析の土台作りとHelicobacter pyloriへの応用」と題し、講師にKirill Kryukov(キリル クリュコフ)先生(国立遺伝学研究所生命ネットワーク研究室 特命准教授)と、鈴木 留美子先生(国立遺伝学研究所ゲノム・進化研究系 特任准教授)を招いて実施しました。
すべての生物学研究において、ゲノム配列を理解することは非常に重要であり、遺伝子の塩基配列を高速に読みとる装置「次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)」の誕生により、様々な生物遺伝情報の解読が可能となりました。一方で、次世代シーケンサーの発展に伴い、現在では週に数百種というペースでゲノムデータがリリースされ、急速に蓄積するゲノムデータを最新の状態で把握すること、また、大容量のデータをどのように効率よく保存するかが問題となっています。
今回のセミナーでは、まず初めに、Kryukov先生が独自に開発したゲノムデータベースGenomeSyncと、データ圧縮技術NAFという、ゲノム解析の土台となる技術の紹介がありました。続いて、鈴木先生から、Helicobacter pylori(通称:ピロリ菌)の研究への応用として、Kryukov先生がデータベースに蓄積したゲノムデータを元に作成した大規模系統樹の紹介と合わせ、沖縄特異的ピロリ菌の伝播経路についての分析やゲノム構造変化が疾患発症や菌の地域性・病原性とどのように関係しているのかについて考察がありました。
鈴木先生は、平成22年から平成31年まで、本センター副センター長の山岡 生教授の講座(医学部環境・予防医学講座)に在籍し研究を実施しており、現在は、Kryukov先生とともに山岡先生との共同研究「ピロリ菌遺伝子に対する進化的選択圧のゲノムワイド解析」を進めています。
配信会場にはゲノム解析に興味を持つ多くの教員・学生が出席し、講演後に積極的な質問が次々と出されていました。全体では、オンランインによる聴講と合わせて25名が参加しました。